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2022/12/26

領収書の発行・受取の基本とは?双方のポイントを押さえて業務をスムーズに

領収書は、経理業務を行う上で日常的に扱う書類です。しかし、その重要性や取り扱いのルールについては自信の持てない方もいるのではないでしょうか。発行する側にも受け取る側にもなるからこそ、取り扱いのルールについてしっかりと押さえておきたいものです。

この記事では、領収書の役割、発行・受取それぞれの立場から見た取り扱い方について解説します。なぜ大切な書類なのかを理解し、日々の業務に生かしましょう。

 

 

領収書とは?

領収書とは、金銭を受け取った事業者が支払い側に向けて発行する書類です。領収書の発行や受取によって、確実に金銭のやり取りが行われたことを証明できます。普段の買い物ではあまり見ないものですが、経理業務を行う上では必ず押さえておきたい書類です。

 

領収書を発行するまでの流れは、以下のような手順が一般的です。

 

・A社がB社に対して商品やサービスを提供する
・B社はその対価として、A社に金銭を支払う
・A社は金銭を受け取ったことを証明するために領収書を発行し、B社に渡す

 

領収書を受け取ることで、B社は支払いが確実に済んでいることを証明できます。そのため、二重請求や過払いの防止に繋がります。また、何のために使ったお金なのかをA社に証明してもらう形となるため、社内の不正防止にも役立つでしょう。受け取った領収書は税務調査でチェックされます。

 

発行したA社から見ても、商品やサービスの対価として、確実に金銭を受け取ったことの証明となります。すなわち売上高を証明するものとなるため、やはり税務調査でチェックされます。

 

このように、領収書は発行側・受取側の双方にとって大切な書類です。法律でルールが定められており、事業を営んでいればどちら側にもなるえるため、それぞれの立場から領収書について理解しておきましょう。

 

 

 

領収書の発行に関するルール

まずは、金銭を受け取って領収書を発行する側のルールについて見ていきましょう。

 

1.   領収書に記載する必要事項

領収書に記載すべき事項は、以下の5点です。

 

1-1.日付

領収書は金銭の受け取りを証明するものであるため、「発行日」ではなく「受取日」を記入します。西暦でも和暦でも構いませんが、省略せずに記載しましょう。領収書の発行が後日になってしまう場合は注意が必要です。

 

 

1-2.金額

領収書の金額の書き方には以下のルールがあります。

・数字は3桁ごとに「,(コンマ)」を付ける
(50万なら 「500,000」)
・頭に「¥」、末尾に「-」「※」、または頭に「金」、末尾に「也」と記載する
(50万円なら「¥500,000-」「¥500,000※」「金500,000也」のいずれか)

 

前者によって読みやすくなり、桁数の改ざん防止や記載ミスの防止に役立ちます。後者は、頭や末尾にマークを入れて数字の間を空けないようにすることで、あとから書き込むことによる改ざんを防ぎます。

「内訳」として、税別の金額と消費税額を記載する欄があれば、それも忘れずに記入しましょう。

 

 

1-3.宛名

領収書の宛名をどのように記載するかは、支払い側に確認しましょう。株式会社や有限会社は「(株)」や「(有)」とせず、「株式会社」「有限会社」と略さずに記入します。「○○株式会社」なのか「株式会社○○」なのかも確認し、正確に記入しましょう。

 

 

1-4.但し書き

但し書きには、金銭を受け取る代わりに提供した商品やサービスの内容を記載します。「文房具代として」「飲食代として」のように、第三者が見ても用途がわかるよう記載しましょう。また、改ざん防止のために末尾に「として」と記載します。

 

 

1-5.発行者

領収書の発行者の名称・氏名、所在地、電話番号を記載しましょう。手書きでなく、社判を使うこともできます。なお、この一画に発行者の認印を押している企業もありますが、必須ではありません。

 

 

 

2. 収入印紙

領収書を発行する際は、記載金額に応じた額の収入印紙を貼る必要があります。印紙税法によって以下のように定められています。

 

 記載金額  収入印紙の額
 5万円未満  なし
 5万円以上、100万円以下  200円
 100万円を超え、200万円以下  400円
200万円を超え、300万円以下  600円
 300万円を超え、500万円以下  1,000円
 500万円を超え、1,000万円以下  2,000円

(参照: 国税庁HP No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書

 

 

なお、収入印紙の額を判断するための「記載金額」は、メインとして記載している、実際にやり取りを行った金額であることが基本です。しかし、税別の金額を別に記載していればその金額で判断することができます。例えば、税込110万円、税別100万円の領収書を発行する場合、以下のようになります。

 

・税込110万円に加え、税別100万円との記載がある…200円の収入印紙
・税別100万円の記載なし(税込110万円との記載のみ)…400円の収入印紙

 

このように、税込か税別かで収入印紙の額が変わることがあります。収入印紙の節約になるため、ぜひ覚えておきましょう。

 

(関連記事)収入印紙とは? 使い方と注意点について解説します

 

 

 

領収書の受領に関するルール

次に、領収書を受け取る側のルールを見ていきましょう。金銭を支払った場合、その証拠として領収書を受け取り、適切に保管しておく必要があります。

 

 

1. 保存方法

近年ペーパーレス化が進んでいますが、今なお領収書は紙で発行されることが多いものです。ファイリングしたり、台紙に貼り付けたりして、原本を保存しましょう。

 

ただし、電子帳簿保存法の要件を満たせば、紙の領収書をスキャンして電子保存し、原本は破棄することができます。要件には、スキャナの性能についてものと、電子データの管理システムに関するものがあります。写真データやスキャンデータをただ保存すればいいわけではないため、要件についてよく確認しましょう。

 

最近では、メールでの領収書の受け取りや、オンラインのシステム上での領収書の共有も増えています。2022年1月の電子帳簿保存法の改正によって、この場合に電子データを紙に印刷して保存することは原則できなくなりました。PCやシステム上で管理するための要件もあり、注意が必要です。

 

(関連記事)電子帳簿保存法とは?内容や対応の要点を分かりやすく解説します

 

 

2. 保存期間

領収書は税法によって、7年間の保管が義務付けられています。これは、税務調査で追加の税金徴収が発生した場合にさかのぼれる期間が7年であるためです。領収書の発行日からではなく、その期の確定申告書の提出期限(事業年度最終日の2か月後)から数えて7年保管しなければなりません。そのため、領収書は事業年度ごとにまとめておくと管理しやすいでしょう。

 

また、赤字になった年の赤字分の金額は翌年度以降に損金算入でき、課税所得を減らすことができます。これを「欠損金の繰越控除」と呼びますが、この控除を受けるには赤字になった年度の領収書を10年間保存しておく必要があります。そのため、領収書は10年保管することにしておくと安心です。

 

 

 

まとめ

日々の業務には当たり前のように取り扱う領収書ですが、そのルールをしっかり学べる機会は少ないものです。法律で定められており税金にも関わるものであるため、知識があれば会社を守ることにもなります。また、重要性や一連の流れを理解することで、責任感を持って正確な業務ができるでしょう。